新入社員の3人に1人が3年以内に離職

厚生労働省は、3年前(平成27年3月)に卒業した新規学卒就職者の就職後3年以内の離職状況についてとりまとめ、公表しました。公表結果の概要は以下のとおりです。

  • 新規高卒就職者の約4割(39.3%)、新規大卒就職者の約3割(31.8%)が就職後3年以内に離職している。
  • 新規学卒者の3年以内離職率は、平成22年以降ほぼ横ばいで推移している。
  • 事業所規模の大きさと離職率には相関関係がある。(事業所規模が大きいほど離職率が低い。)
    1000人以上の事業所の3年以内離職率 大卒24.2%、高卒25.3%
    30~99人の事業所の3年以内離職率 大卒39.0% 高卒46.3%
  • 業種別では、「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「教育・学習支援業」「医療、福祉」「小売業」の3年以内離職率が高い。特に「宿泊業・飲食サービス業」では大卒(49.7%)高卒(63.2%)となっており、大卒・高卒ともにワースト1となっている。

「給料」「休み」が多い大企業には太刀打ちできない?

特に注目したいのが、事業所の規模と離職率にはっきりと相関関係が出ている点です。「大企業は給料がいいし休みが多いから定着するのはあたりまえ。中小企業ではとても太刀打ちできない」ということなのでしょうか。実はそうともいえないのです。労働環境向上において「給与」「休み」以外で大企業はできていて中小企業はできていないことはたくさんあります。そこを改善することにより中小企業であっても学卒新入社員の定着を高めることが十分可能であると私どもは考えています。

弊所の顧問先で最も多いのがまさに3年以内離職率ワースト1の「宿泊業・飲食サービス業」で「30~99人規模」の会社です。統計上は2人に1人以上の学卒新入社員が3年以内に退職するような状況ですが、弊社の顧問先においてはこのような状況ではなく、学卒新入社員の定着状況は良好です。

これらの企業は特に給与が多いとか休日が多いとかいうわけではありません。サービス業なので土日も仕事がありますし、新潟県は雪国でもあり季節的な繁閑が大きく、繁忙期には残業や休日出勤も多くあります。にもかかわらず、定着率が良いのは、「特別なことはしていないが、基本的な労働環境の整備ができている」ことが社員に評価されていると考えられます。

  • 就業規則の整備、労働条件通知書の交付、労働時間や賃金体系の整備など、基本的な労働環境の整備を行っていること
  • 人事評価制度、教育研修制度を少しずつ構築してきたこと

など、大企業なみの労働条件ではないですが、中小企業ながらできる範囲でコツコツと人材育成のしくみづくりを行っている効果が出ているものと思われます。

ある当社の顧問先(旅館業)では毎年のように積極的に新卒採用を行っており、地元の高校・専門学校だけでなく、新潟大学など国立大学や東京の有名私立大学からも例年採用を行っています。数年前に入社した最初の大卒社員はいまではスキルアップしマネージャー候補として会社の中核社員として活躍しています。プライベートでも結婚されて家庭を築き、公私ともに充実した毎日を送られているとのことです。

この社員は、今のような人手不足時代に入社したのではありません。やめたら新しい人を採用することも比較的容易だった時期に入社されました。この会社はそのころから「社員がやめたら補充すればいい」という方針ではなく、「今いる社員を育てる、戦力化する」「今いる社員がプライドを持てる会社・職場づくりをする」ことにできる範囲でコツコツととりくんできたのです。その結果、人手不足時代になっても、新卒者から「この会社で働きたい」と選ばれる会社になることができたのです。

「今いる社員」をしっかり育成し、定着させることが、採用力向上につながる

「効果的な求人方法は」「ハローワークの求人票はどのように書けばいいのでしょうか」など、弊所には採用に関するご相談が毎日のように寄せられています。もちろん採用の工夫も大事です。しかし、採用施策を工夫するのと同時に、いやそれ以上に今いる社員の育成・定着施策に力を入れることがとても大事です。採用施策が「即効薬」とすれば、いまいる社員に対する人材育成や定着施策は「漢方薬」「栄養のある食事」のようなものです。即効性はなくても採用活動にも必ず効いてきます。そしてそれが会社の採用力の「地力」となります。

統計上は新規学卒者の3年以内離職率はリーマンショック後一時下がりましたが、平成22年以降では大卒は約3割、高卒は約4割で推移しており概ね変化はありません。このことからまだまだ育成・定着策に取り組む中小企業の割合はそう多くないものと考えられます。しかし人手不足時代を迎え、これらの施策に取り組む中小企業も今後多くなってくるでしょう。

したがって、他社より早く労働環境の整備に着手して求職者から選ばれる会社、人手不足時代であっても人材が確保できる会社になることが、これからの中小企業の事業継続にとって有利に働くことは間違いないでしょう。(礒谷哲夫)